(道場主)
母珠(オヤダマ)より七個の珠は。
(行者)
眼耳鼻口(ゲンニヒク)の七穴(シチケツ)をかたどる。
(道場主)
二十一遍に至るは。
(行者)
三世セ覚満(サンゼカクマン)の義なり。
(道場主)
二十一遍より緒留(オドメ)に至る三十三個は。
(行者)
普門広現の世の変るを標するなり。
(道場主)
念珠をこするは。
(行者)
百八煩悩を推滅(サイメツ)して菩提の妙果を証得するの義にて候。
(道場主)
しからば錫杖は何故に所持せらるるや。
(行者)
これぞ法界の総体にして衆生覚道の智杖なり。
これに三種あり。
第一に声聞杖(ショウモンジョウ)四輪なり。即ち、苦修滅道の四蹄(シタイ)を表す。
第二には、縁覚杖(エンカクジョウ)にして十二輪なり。即ち、十二因縁を表し。
第三には、菩薩杖六輪なり。即ち六波羅蜜を表す。
修験所持の錫杖、これなり。
即ち一切衆生苦界(クガイ)の長眠を驚覚(キョウカク)するの意なりと心得て候。
(道場主)
錫杖をふる理由(イワレ)は。
(行者)
即ち一切衆生苦界(クガイ)の長眠を驚覚(キョウカク)するの意なりと心得て候。
(道場主)
金剛杖は。
(行者)
これ即ち智杖とも云う。その形、円棒なるは二利円満の義なり。
桧木(ヒノキ)は火なり。火は智なり。智は能(ヨ)く衆生の煩悩を照破(ショウハ)し、
貧窮(ヒンキュウ)と福生憧(フクショウド)と六種済(ロクシュサイ)の智杖(チジョウ)なり。
(道場主)
鈴懸(スズカケ)を着する理由(イワレ)は。
(行者)
鈴懸とは入峯修行用の法衣にして、金胎両部(コンタイリョウブ)の法衣なり。
即ち、当道場 真俗不二(シンゾクフニ)・
当位即妙内証(トウイソクミョウナイショウ)の教義を表す。
その俗体(ゾクタイ)を改めず俗衣(ゾクイ)をかえずして色心実相の極意を表す。
鈴とは六大週遍法界の塔婆(トウバ)にして この衣をかけて金胎両部(コンタイリョウブ)、
一乗菩提の峯を修行するが故に 、鈴懸と申し着用するものにて候。
(道場主)
して引敷(ヒッシキ)をつけたるは。
(行者)
入峯修行用の坐具にして獅子の皮にて作る。これ獅子に乗ると感想する。
獅子は畜類の王にして畜類を煩悩にたとうるが故に、煩悩の王たる無明(ムミョウ)煩悩なり。
即ち無明即法性、無明の道理を表さんがため、獅子に乗ると心得て着用するものなり。
(道場主)
腰に巻きたる絹索(ケンサク)の儀や如何(イカ)に。
(行者)
意馬心猿(イバシンエン)の狂(キョウ)をつなぎとめ
難伏者(ナンブクモノ)は縛(バク)せんがためにて候。
これに三種あり。
先達十六尺、中先達二十五尺、大先達三十七尺。
先達十六尺は般若十六菩神を表し、中先達二十五尺は二十五菩薩を表す、
大先達三十七尺は三十七尊を表すものにて候。
(道場主)
法螺は何故に所持せたるるや。
(行者)
それ、法螺と曰者(イッパ)、金剛界鑁字(バンジ)の智体に.して、
法身j説法(ホッシンセッポウ)の内証、三界の諸仏、次々に出世し給(タマ)い、、
説法大会の砌(ミギリ)、大法螺(ダイホーラ)を吹き
三界の天衆(テンシユウ)を驚し、六道(リクドウ)の妄夢(モウム)をさまし、
皆ことごとく中道不生(フショウ)の覚位に帰せしむる儀にて候。
(道場主)
して手甲(テコウ)は。
(行者)
金剛界。
(道場主)
脚絆(キャハン)は。
(行者)
胎蔵界。
(道場主)
草鞋(ワラジ)は。
(行者)
八葉(ハチヨウ)の蓮華(レンゲ)に乗る心にて候。
(道場主)
身は僧籍にして衆生済度の優婆塞道(ウバソクドウ)にありながら、
腰に帯(タイ)する太刀や如何(イカ)に。
(行者)
これぞ金剛法剣にして不動明王の智剣なり。
故(カルガユエ)に、自身を切らず他人を切らず煩悩菩提を切キらず、
本来無一物(ムイチモツ)なり。
然(シカ)りといえども 邪正(ジャショウ)相戦ふ時んば、
般若の霊威(レイ)三昧邪形(サマヤギョウ)の利剣となって、
一切衆生諸々の戯論煩悩(ケロンボンノウ)及び悪業の敵を断絶し
無漏(ムロ)の覚城(カクジョウ)に入(イ)る事、何の疑か之あらん。即ち不動利剣にて候。
(道場主)
然らば最後にお尋ね申す。
当道場中央に組まれし、修験道千三百有余年来秘伝の法、
あれなる護摩の大法の儀な如何に。
(行者)
それ柴燈大護摩供厳修と曰者(イッパ)、
東方 阿シュク (アシュク)如来の木を、西方 阿弥陀如来の金(カネ)をもって、
中央 大日如来の大地に切り積みて、南方 宝生(ホウショウ)如来の火放ち、
これを悉(コトゴト)く焚焼(フンショウ)し、
北方 釈迦如来の閼伽(アカ)を以って清浄ならしむ大法なりと心得て候。
<仏教では水の事を、法水又は閼伽(アカ)と云う。>
(道場主)
然らば最後にお尋ね申す。
姿形(スガタカタチ)ある一切衆生の悪業の敵は、断絶しうると言えども、
姿形なき天魔・外道(ゲドウ)・四魔・三障の類(タグイ)は、
何をもって制し得るや。何をもって制し得るや。
(行者)
これぞ真言秘密の法にして、口外(コウガイ)すべきにあらず。
口外すべきにあらねども、戒(カイ)を破りて申し述べん。
即ち、口をすすぎ手を洗い身を清め、東に向い歯をたたく事三十六度(タビ)し、
手に印契(インゲイ)を結び口に呪文を唱ふ。
即ち、臨(リン)・兵(ビョウ)・闘(トウ)・者(シャ)・皆(カイ)・陳(ヂン)・列(レツ)・在(ザイ)・前(ゼン)・
怨敵(オンテキ)退散・かんまんぼろん・急々如律令(キュウキュウニョリツリョウ)と唱えて、
九字(クジ)を切れば、退散する事、疑いなし。
(道場主)
先程よりの御答一々御尤もなり。真実(マコト)の山伏と心得て候。
入場さし許す。御通り召されよ。
(行者)
有難く入場仕(ツカマツ)る。其れ一同、従い召されよ。